ワークショップ実践者の専門性

森玲奈さんの「ワークショップデザインにおける熟達と実践者の育成」に記載されていた研究結果がおもしろかったのでまとめてみる

 

ワークショップ、広くは「場をつくる」設計プロセスや運営時のコツなどの多くは、経験則で暗黙知化されていることが多く、経験を積まないと良い場は作れないことが多い。しかしながら、専門家がどういうことに気をつけているのかを知ることで初学者の水準をぐっと引き上げることができるように思う。

 

下記、前述した書籍からの抜粋で、アプローチとしては「ワークショップの専門的な実践者複数名に対して行ったインタビュー内容の発話分析」

インタビュー時の観点は下記の3つ

 (1)ワークショップ実践者に必要だと思うこと

 (2)すぐれたワークショップ実践者の条件

 (3)ワークショップ実践者として後進を育てることを考えた場合に見に付けておいてもらいたい、もしくは知っておいてもらいたいこと

 

そこから得られた結果が以下

 

【ワークショップ実践者の専門性】

□ 実践に方向性・ねらいを持つこと

□ 計面的に進めつつ即興を楽しむこと

□ 理論と実践のバランスをとること

□ 人前に立つことへの恐れと喜びを両方持つこと

□ 準備と確認をすること

□ コミュニケーション能力があること

□ 全体を見渡す力があること

□ 表現力があること

□ 人をひきつける魅力があること

□ 誰よりも自由で誰よりも冷静であること

□ どんなことにでも興味を持てること

□ 実践時にプロセスを重視していること

□ 多様な参加者の想いを受容すること

□ 現場でやり過ぎない(目立たないくらいにする、存在を消す)こと

□ 参加者の気持ちに想いを馳せることが出来る思いやりがあること

□ 伝えるべきルールなどをきちんと届けることができること

□ 当たり前の事でも多角的に見ることが出来ること

□ どんなことにでも興味を持て、理解しようとすることができること

□ ワークショップを一手段として捉えていること

□ 自身が楽しんでいること

□ 参加者に素直に共感できること

□ 当たり前のことを当たり前にやる自然さがあること

□ 参加者に無理の無い企画を立てること

□ 目的がわかりやすい企画を立てること

□ 体験したことを抽象化して言語化できるよう、よく見る(観察する)こと

□ 今興味を持っていることを一生懸命やること

□ 他者への参加のしてもらい方を知ること

□ 実行力があること

□ 実践中、自分にどの段階でどのくらい負荷がかかるのか認識していること

□ 参加者に対して人としてきちんと向き合うこと

□ 実践に対する心構えを持っていること

□ 既存のワークショップの実践に理想を追い求めないこと

 

 

もうワークショップをし始めて4,5年になるけれど、いまでもなるほどーと思う観点があり良い研究結果。

自分なりの実践における哲学や心構えを持っていることって大事だなーと思いながら、ちゃんとこのあたりも言語化しないといけないなと思った次第。

 

【参考文献】

ワークショップデザインにおける熟達と実践者の育成,森玲奈,ひつじ書房,2015