教育工学の学会に参加して
日本教育工学大会に参加してきました.
とりあえず教育工学についてまるまる九州大学の山田研究室から引っ張ってきました。
教育工学は「教育改善のために実践的に貢献する学際分野であること, 教育成果を上げる技術・工夫を体系化していくことを目的とした学である」とされています(日本教育工学会, 2000). 最近の定義では, 教育工学コミュニケーション学会(Association for Educational Communications & Technology: AECT) 2008年の定義であり, 「適切な工学的プロセスとリソースを創造し, 利用し, 管理していくことによって, 学習を支援(facilitating)し, パフォーマンスを向上させるための研究と倫理的実践である」 (Richey, 2008)とされています. ただ、実践を行うのではなく、研究フィールドとする場面(文脈)において、ある程度の汎用性を持たせたモデルやシステムを導き出すことが大きなゴールになります。
これまで教育工学研究で扱われてきた行動主義(刺激と反応の関係に基づく、外部から観察できる人間の行動こそを評価の対象とする考え方)、認知主義(人間の内面で起こる情報処理プロセスに基づいて教育・学習プログラムを最適化する考え方)、社会構成主義(既に人間が持っている知識構造を他者や人工物との相互作用することで、再構成すること、そのプロセスが学習であるという考え方)といった関係諸理論を踏まえ、様々な研究や実践がされてきました。実践に帰することが今も昔も変わらない教育工学の目標ではありますが、実践への展開をゴールとしつつも、実践展開の前段階の研究も重要となります。それは教育工学研究において、何かしらの処遇、モデル、システムを実践に使い、普及していく場合、それらが本当に有効なのか検討する必要があります。それを実験的に実験群・対照群を立てて、効果を比較する場合もあれば、実践の場で、理論に立ち戻りながら開発したモデルや処遇、システムの改善をし、実践に合う形にしていくというアプローチもあります。
教育工学は、様々な研究分野の応用研究分野になります。教育工学の基礎研究分野としては、教育学だけではなく、教育心理学、学習科学、人類学、統計学、ICTの活用に関心がある方は情報科学も含まれます。近年では脳科学で扱われる研究手法を活用する研究もあります。各基礎研究分野で扱われる理論や研究手法を活用していきます。
研究のフィールドとしては大変幅広く、幼児教育から生涯教育・学習まであります。企業内教育、医学教育も1つ注目されている分野でもあります。そのため、近年、教育工学に関心を持つ方の背景も多様であり、学生や学校の先生だけではなく、企業等で人材育成に関わる方、大学職員でFD・SDをされる方や医学教育では医師や看護師の方でも関心を持つ方が増えています。
参考文献
一言でいうと”実践研究”であるということ
これは,学会で何度も叫ばれていました
おそらく,こういう分野横断型の研究のジレンマなのだろうが
いままで積み上げてきたものが少ないために,この分野におけるメソドロジーが確立していないからか「こんなことしました」「こんな実験しました」にとどまっているような気がする(逆にメソドロジーが確立してしまうのも危険ではあるが)
というよりも,やはり得られたデータのまとめかた,そのまとめから論理的にどういうことが推察されるのか?その推察は過去の研究にどう紐付いているのか?そういった全体像をもっとうまく伝える必要がある.
実践と理論をどう橋渡しするのか?
自戒をこめて、自分が研究するにおいて大事にしないといけないことを…
①過去の論文を徹底的に探ること
②いままでになく,かつ自分がやりたいと思えるリサーチクエスチョンをたてること
③最終的なビジョンを描いてみる
④どういったデータをとる必要があるかを予測する
⑤それに合わせてプロセスを構築する